親知らず(智歯)について


 親知らず(以下智歯)は、早い人で18才ぐらいから生え始める一番奥の歯のことです。顎の成長がほぼ終わってから生えてくる歯で、スペースのないところに無理に生えてこようとするケースが多くみられます。歯を咀嚼するための器官と考えると、親知らずはどうしても必要なものではありません。咀嚼に必要な歯は6歳臼歯の一つ奥(智歯の手前の歯、以下第二大臼歯)までで十分です。まっすぐ生えて上下の智歯が、きちっと噛み合ってればいいのですが、先に書いたように狭いスペースに無理に生えてくるので、横を向いたり、外側(ほっぺた側)を向いたり、内側(舌側)を向いたりして噛み合っていないケースが多くみられます。また、生えてくる際に歯ぐきを突き破って生えてくるので炎症を発症し痛みを伴うこともしばしばです。また、まっすぐに生えた智歯でも口は奥に行くほど狭くなるので、ブラッシングの際にかなり注意しないと、歯周病(智歯周囲炎)や虫歯になってしまいます(智歯以前の歯よりもリスクが高いと思います)。基本的に歯ブラシは毎日やる習慣ですので、智歯が生える前の習慣がそのまま継続している人は、智歯の周りに歯垢や歯石が沢山付いていることが、よく見受けられます。智歯が虫歯や歯周病になったとき、原則として抜歯をするべきです。なぜなら、さほど必要でない歯(智歯)の為に、必要な歯(第二大臼歯)を悪くすることほど「もったいない」ことはないからです。虫歯のところでも述べたように、歯周病や虫歯は細菌感染によっておこるので、その隣の歯は最も感染しやすいと考えるのが妥当です。結論として、智歯は第二大臼歯にトラブルが起こる前に予防的に抜歯をし、口の中の清掃環境を整えることが重要です。

 もちろん、「抜きたくない」と思っている方に強制はできません。智歯もその方にとっては重要な組織です。そのような場合、残すリスクを説明して、きちんと清掃できることを確認して残すべきです。

 

 余談ですが、私自身も智歯はすべて20歳前後の時に抜いてしまいました。